落ちたって命を取られるわけじゃない

「落ちたって命を取られるわけじゃない」

これは、ワインコーチとして伴走させていただいている受験生の言葉です。

彼女は、いろいろなアドバイスを素直に取り入れ、挑戦し続けています。長い受験期間中、うまくいかないことや学習時間が取れない時期ももちろんありますが、常に前向きに挑戦する姿勢から、私自身も多くの元気と刺激をもらっています。

私はWSET認定Level 4 Diploma試験の受験生を対象にサポートをしていますが、このレベルになると、教えるというより、共に歩むことが中心になります。なぜなら、この試験は完全記述式であり、明確な「正解」がないからです。

10人の受験生がいれば、10通りの答えが存在します。シャトー名や特級畑の知識を詰め込んでも、それだけでは合格できない試験です。暗記は必要ですが、その先にある「だからどうなの?」「なぜそうなっているの?」という深い思考が求められるのです。

正解がない試験ゆえ、これさえやっておけば受かるという勉強法や教材も存在しません。難しいですが、知的好奇心を大いに刺激される試験でもあり、挑戦する価値があります。

Diplomaの称号を得るためには、6つの科目すべてに合格する必要があります。私は4年かけて受験勉強をし、ようやく最終合格を手にしました。英語が苦手で、文章を書くのにも慣れていなかった当時、不合格通知をもらい、落ち込む日々が続きました。しかし、学べば学ぶほどワインの世界に惹かれ、試験の面白さにハマっていきました。

そんな劣等生だったからこそ、現役の受験生に伝えられることがあると信じています。自分の経験が役立つと感じ、コロナ禍でリアルのワインの仕事が難しくなったこともあり、ワインコーチングを始めました。あれから3年半が経ちました。

この試験は、受け身で知識を詰め込むだけでは突破できません。そのため、私のコーチングは、まず受験生に「どのようなマインドが必要か」に気づいてもらうことから始まります。

初回面談の際に、「この方のサポートは私にはできない」と感じた場合、お断りすることもありました。特に、「全て教えてほしい」「自分で考えられない、決められない」という姿勢の人は、そもそもDiploma試験には合格できません。

私のワインコーチングは、受験生との対等で自立した関係を築いています。「いつまでにこれをやってください」というような指示や命令は一切しません。進捗の管理もせず、何をどれだけ取り組むかは、すべて受験生本人が決めるのです。

もちろん、アドバイスを素直に受け入れる姿勢や謙虚さも重要ですが、それと同時に、自分で考え、決断し、行動を継続することが求められます。

受験のストレスが学習の妨げになっている場合、時にはとことん話を聞くこともあります。吐き出すことで気持ちが整理され、「また頑張ろう」と笑顔が戻る瞬間は、コーチをしていて本当に良かったと思える瞬間です。

迷いながら続けてきた3年半でしたが、必要としてくれる人が利用してくれ、その成長を間近で見守ることができ、合格通知を受け取るたびに感謝される瞬間は、挑戦して良かったと心から思える瞬間です。

これからも、必要な方にこのサポートを届けていきます。

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